チャドで働く国連機関契約職員の日記

チャドの田舎で国連機関の期間契約職員として働くことになった日本人の日記です。ブログでの記述は個人の見解であって、所属組織を代表するものではありません

初めての国・組織・仕事に、あまり得意でない言語で取り組むことの不安について

羽田を出発して、経由地のトルコ・イスタンブールで12時間のトランジット中。

最初は、この時間を使ってチャドのことについて書こうか、、、とも思ったけれども、そんなことはいつでも書けるので、今この瞬間に、これから働く仕事について感じていて、おそらく1か月後には大きく変わっているであろうことを書こうと思う。

今回の仕事は、チャドの田舎で6か月間、難民・国内避難民向けの人道支援を行うこと。細かいことは、現地に行かないとわからないのだけれども、きちんと成果が出せるのか、とても不安、というのが正直なところ。

巷の書籍では、人間、わからない状況が一番不安だから、何が不安なのかを書いてみるとよい、と言われている。なので、半ば自己紹介がてら、書いてみる。

僕は今まで結構なキャリチェンジをしてきている。具体的には、日本企業でシステムエンジニア→インド企業でシステムエンジニア→米系戦略ファームの日本オフィスでコンサルタント政府系金融機関でインド・アフリカ向けにファイナンスセネガルMBA留学→日本企業の海外進出支援コンサルタントとして何でもやる、という感じ。

結構変わってきているけれど、場所も、組織形態も、業務も、言葉も、一気に同時に変わる&やったことが無いというのは、実は今回が初めて。

僕はいま42歳なので、そもそも、誰でも簡単にできる仕事をするというような立場で働くことはあんまり期待されておらず、何をするにしても、それなりに「面倒」なことが回ってくる。仕事が複雑だったり、責任が重かったり。何よりも、時間を含むリソースが一定程度制約される中で、ある程度、どんなことでも、どうにかしないといけないし、そういうことができると期待されるお年頃と言っていいと思う。

だからこの年頃の転職というのは、普通は、それまで培った何かしらの専門性とか得意分野の延長線上に来ることが多い。だから選択肢が狭いし、かつ市場でもポジションの数は多くない(管理職的な立場になるから)。逆に、それなりにそれまでの経験が生かされたポジションに決まるわけだから、入ってみてわけわからない、ということは無いと思う。

今回の僕の仕事について考えてみると、、、まずはチャドが初めて訪問する国ということ。それは今までもいくらでも経験があるから問題なし。組織形態も初めての国際機関だけれど、大きな組織では働いたことがあるし(自分のいたインド企業は自分が働いていた時点で従業員3万5千人を超えていたはず)、公的機関という意味でも日本の政府系機関で働いたことがあるから、内部の意思決定プロセスを理解すれば、(快適かどうかは別として)順応はできると思う。
問題があるとすれば、初めての業務 × 流暢でない言葉、のコンボである。

・初めての業務でもコミュニケーションを取りまくれば、どうにかなる。

・流暢でない言葉での仕事でもやったことのある仕事なら、どうにかなる。

両方ともよくわからないという組み合わせは、結構大変である。よくわからないことをよくわからない言葉でやることになるから。

今回の業務上の使用言語はフランス語。フランス語はセネガルMBAを取ったり、前職の日本企業のコンサル時代にモロッコ現地法人にハンズオンで入って使ったけれど、いずれも、一部英語が使える環境だった。今回も、英語が全く使えないということではない(国連機関職員だから現地職員でも英語はある程度できる、はず)けど、フランス語が主言語になるはず。

自分のフランス語運用能力は、セネガル留学前に取得したDELFのB2(フランスの大学に留学できるC1というレベルの1個下)だけれど、取得してからものすごく時間がたってるし、そもそもB2も100点満点中50点で合格のところ、52点で合格というギリギリ通過だったので、セネガル留学当初は、日々退学の恐怖に泣いてたくらい。

チャドに入る前にできることとして、業務で使用しているフランス語のレポートは大量に送ってもらっていて、少なくとも用語くらいは頭に入れておこうとしている。現場でそれがどれくらい効果があるのかは、行ってみないとわからない。主要な会議はフランス語になるはずで、聞き取ることができるかは、そもそもレポートを読めるかどうかでは全く判断できない(言いたいことは、言えるとは思うのだけれど)。意外と理解できるかもしれないし、逆に全然わからなくて、日々チャドの田舎で途方に暮れるかもしれない。今から思えば、現地業務の会議にテレカンでも入れてもらえばよかった。(今後、言語に少しでも不安のある職場に転職をされる方は、ぜひ事前に(もちろん、内定後に)、業務上のテレカンに混ぜてもらうことをお勧めする。)

また、今回の赴任地は、治安が決していいとは言えない場所で、国連のハードシップレベルが最も高い。担当する地域内では、政府軍と武装勢力が衝突したり、武装勢力が現地住民・難民・国内避難民を襲撃したり誘拐したりもしている。そんな中で、緊急時に、言葉が十分に理解できないというのは、致命的ではないだろうか。

ということで、書けば書くほど不安になってきた(不安を書き出せばいいよというアドバイスは、残念ながら、そうでないケースもあるということかもしれない)。

ここで終わってしまうとただの愚痴というか、よくわからない不安のぶちまけになってしまうので、じゃあどうしたものか、ということを書いてみたい。

過去多くの職場で働いてきて、どんな仕事も究極的には、

(1)ゴールを設定して

(2)ゴールを達成するためのツール(戦略/戦術/方法論、等々)を考えて

(3)そのツールを動員するリソース(人/モノ/金/情報/時間、内部/外部)を準備して

(4)実行する

ということに尽きると考えるようになった。(何かがうまく行って無い時、プランニングレベルでは(1)~(3)の何かが足りてないことが多いので、それをチェックする。ゴールのG、ツールのT、リソースのRの頭文字をとって、GTRフレームワークと個人的に名付けている)。

チームや上司・部下で仕事をする場合には、(1)~(4)について、Mutual Expectation Setting(相互に期待をセットすること)が必要かつ効果的(これはインドのIT企業で学んだ)。そうすると、社会文化背景の異なる相手とも、少なくとも、同じ状況を共有して、同じ方向を向いて働けるようになる環境はできる(相手が思った通りに動いてくれるかどうかはまた別の話)。

今回の職場では、ありがたいことに上司がいるし、当然英語が流暢に話せる。その上司にとっても、当然ながら僕がきちんとワークすることは、僕を採用した上司にとってとても大事なことになる。だから僕がコントロールできることは、上記の(1)~(4)について、きちんと英語でコミュニケーションをとって、少なくとも上司が僕の状況を理解し続けるように努力すること、あとは業務の中で揉まれることで少しでも早く、フランス語に慣れることに尽きる。

コントロールできることを、頭でも体でも、一生懸命やって、あとは、今回の期間契約終了後に次の有望なポジションがあるかどうかは、その時の縁としか思うしかない。同じ機関でなくとも、一生懸命・誠意を尽くして仕事をすれば、結果的にはどこかで誰かが拾ってくれるというのがこれまでの経験則なので、とりあえずは目の前の仕事に一生懸命取り組むことに尽きそうだ。GTRフレームワークが通用するかも、試してみよう。

不安が減ることはやはりなかったけれど、何をすべきかは改めてクリアかつ単純になった気がする。あと冷静に考えれば考えるほど、この年齢になって、こんな不安になりながら新しい職場に飛び込めるという環境は、純粋にありがたい。今回の機会を作ってくれた同僚、認めてくれた家族、前職で海外パートナーとなったけれどもそこから離れることを温かく見送ってくれた起業家・友人、今回の転職でお世話になった過去の上司・同僚、などなど挙げればキリがないけれど、公私でかかわりのあった方々には感謝してもしきれない。