チャドで働く国連機関契約職員の日記

チャドの田舎で国連機関の期間契約職員として働くことになった日本人の日記です。ブログでの記述は個人の見解であって、所属組織を代表するものではありません

国連の人道支援現場におけるメンタルの保ち方(2)

前回は、仕事量の多さと、その中で完璧を求めるのはナンセンスとさえ言えるということを頭に入れておくといいと思う、ということを書いた。

とはいえ、日々、上下左右から要請・指示・依頼が飛んでくるくるのは、それ自体、メンタル的に厳しいものがある。それらはこなさないといけないことなのに、自分が十分にこなせていないということを十二分にわかっていると、かなりつらい。その仕事がこなせないのは、自分のチームメンバーによるところが大きいこともあるし、そうすると、その仕事がこなせないチームメンバーや部下に対するストレスと同時に、自分の管理能力の低さを思い知ってダブルでメンタルに来ることもある。

その中で、自身のメンタルをどうやってまともに保つか、について、僕が一貫して取っている意思決定がある。

Proactive Unconditional Trust(無条件の前のめりでの信頼、略してPUT)

これは、今の仕事のかなり前から、多国籍・リモートのチームで働くときに必要なこととして自分の中で決めごととしている。誰かに対する信頼を、アウトプットがどんなものであろうとも、無条件に、誰しもが、与えられた環境で、ベストを尽くしていると、信頼することにする、という意思決定。

例えばある人が、自分に対して、かなり時間的・量的に厳しい要求をしてきたとする。その人の平時の仕事ぶりとかアウトプットを見たら結構無責任だし、時間軸的に、なんでいまさらそんなことをこの短期間で完成させないといけないんだ、という類のことだったりする(というか、そういうことはかなり多くある)。

ここで、相手に対いていちいち腹を立てていたりしていたら、いくら時間と心の余裕があっても足りないし、そんなことをしていても、何の足しにもならない。

これをPUTの視点でとらえると、相手が実際にそうであるかどうかは別として、「きっとこの依頼を僕に今お願いせざるを得なかったのは、他にたくさんの仕事があるとか、急に、上司とか他の組織からそれを依頼されて、僕に今振ってくるしかなかったのだろう。彼としては、ベストを尽くした結果として、今僕に、この依頼をしてきたのだろう」と考えるように自分の中で決める(「決める」というのがすごく大事)。少なくとも、相手がベストを尽くしてきて、その結果が、今の状況であれば、まあ、しょうがないか、と少しは思える。少なくとも、その人なりにベストを尽くしているという人を、あんまり責める気にはなれないし、そうすると不思議なことに、その人や状況に対するストレスが1ミリくらいは減る。

逆に言うとこれは、そのような環境において、本当はもっと先読みができたかもしれないけれど、このギリギリのタイミングでしか依頼ができない、要は予見能力とか、仕事をうまく割り振る能力が、今の彼/彼女には備わっていないのだ、ということも同時に意味する。要は「まあ、彼の能力はこんなものなのだから、しょうがないよね」と考える、ということでもある。

そして、普通に考えると、わざわざ、僕をいじめようとして厳しい要求をしてきたわけではない(普通の人は、そこまで暇ではない)。

これらを合わせると、「与えられた環境下で、相手の人は相手の人なりに能力を出し切った結果として飛んできたのがこの依頼である。悪気があるわけでもないし、(前述したとおり)半ばダメもとで振ってきたということもあるだろう。まあしょうがないよね」と考える。これを、上司/部下、内部/外部問わずに適用していくと、少し、余裕をもって受け止めることができる。(少なくとも僕は、こう考えることで、心の余裕が生まれる)

これは逆もしかりで、自分が誰かに何かを依頼・要請・指示をした時にも、同じように考えたほうがいい。ろくでもない結果が出てきたとしても、その人なりに現時点で与えられた環境で、その人なりのベストの結果がこれである、だからそれを前提にしてどうにかするしかないよね、と考えるようにする。

そのうえで、以前書いた通り、完璧を目指す必要はないのだから、他の人にも完璧を強いるべきではない、と考えて、できることを、可能な範囲内で誠実に対応していく。こういうスタンスをとると、上下左右からの&上下左右への依頼に対しても、一定の心の余裕を自分の中で確保できると思う。

ということで、個々の依頼とか仕事に対して、こういう形である程度の心の余裕を確保できたとしても、やはり全体で、仕事の量が多いのでパンクしそうになる。完璧を目指す必要はないとはいえ、一定の成果は出さないといけないし、時には、どうしても守らないといけない期限もある。そういう時を含めて、どういう風に考えると、最低限のアウトプットを出し続けられるか、というのを、次に書いていきたいと思う。